研究概要 |
4年間の継続研究によりこの間に論文19編,国内学会発表18件,国の内外の国際学会発表12件,学会論文集編集1号,解説記事等4編の成果を上げた. さらにこれらの成果を背景に1999年度からは国連ユネスコの国際学術共同研究であるIGCP(国際地質対比計画)プロジェクトが承認され,プロジェクト第434として約20カ国の研究者を統合し主宰するに至った. 研究の内容面についての成果を上げれば概ね次の通りである. 1.北海道北大夕張地方の下部及び中部蝦夷層群の大型化石層序の情報を整備し,安定炭素同位体比の変動をほぼ明らかにした.併せて有機地球化学分析も実施し,古海洋環境を復元した.これらにより,当該地方にアプチアン・アルビアン階にわたる4回の海洋無酸素事変が生じたことがほぼ明らかとなった.これらはOAE1の1a〜1dであろうと想定している. 2.北海道天塩地方中川町の下部及び中部蝦夷層群の大型化石層序・放散虫化石層序をほぼ確立し,国際対比の精度を従来より以上に向上させた. 3.上記中川地方の下部・中部蝦夷層群について安定炭素同位体比変動を明らかにし,併せて有機地球化学分析を行い,当時の海洋環境を復元すると共に,OAE1のうち少なくとも3回の小事変が発生したことをほぼ明らかにした. 4.本邦白亜系産のアンモナイト類の種レベル,亜階単位のデータ・ベースを作成した. 5.データ・ベースを分析することにより,本邦白亜紀アンモナイト類の種多様性の変動は,海洋無酸素事変により支配されていることを明らかにした. 6.白亜紀後期にアンモナイト類は漸減傾向を示し,700種に及ぶ白亜紀アンモナイト類の95%以上はK/T境界以前に絶滅し,K/T境界時の絶滅は極めて微々たるものであることを明らかにした.
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