研究概要 |
北西太平洋に48ヶ月間設置された65個のセジメント・トラップサンプルと7本のDSDP(Deep Sea Drilling Project)コア(Sites,577,578,579,579A,580,581,192)、南極大陸のLutzow-Holm湾から採取された20個の海氷、海水試料の解析から、"cosmopolitan"なプランクトン珪藻であるThalassionema nitzschioidesとその変種の時空分布が海洋大循環の変遷にともなって起こる表層水塊の分化やその時空分布と密接に関連して変動していることが明らかになった。 DSDP-ODP(Ocean Drilling Program)コアにおいて、T.nitzschioidesは古第三紀後期から第四紀に産出する。しかし現在の極前線(Polar Front)以南の南極環流域にはほとんど出現しない。南極半島沖の太平洋側から採取されたODPコア(Site 1905)における570、520-470、440-370万年前のT.nitzschioidesの増加は、現在の南大洋における植物プランクトンの地理的分布(Plankton province)の主要な境界である南極収束線(Antarctic Convergence)あるいは極前線(Polar Front)の移動によるものであることが明らかになった。 これらの成果から、T.nitzschioidesとその変種の時空分布は表層水塊の分化に起因する地質時代の"plankton province"変遷史を解明する新しい指標であると結論することができる。
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