研究課題/領域番号 |
09871006
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研究種目 |
萌芽的研究
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
宗教学
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研究機関 | 東京大学 (1998-1999) 工学院大学 (1997) |
研究代表者 |
鶴岡 賀雄 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (60180056)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1999年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1998年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
1997年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 神秘主義 / 近代性 / 神秘体験 / キリスト教 / 聖典解放 |
研究概要 |
本研究の最終年度に当たり、研究成果を集約して発表する論文を作成することを目指していたが、積年の研究テーマである十字架のヨハネに関する研究書を刊行する作業と重なり、初期の目標が実行できなかったことは遺憾である。しかし神秘主義概念の形成史に関しては、以下のような見通しを固めることができた。 神秘主義概念の形成については、次の三つの時代が重要な画期をなす。(1)古代後期:キリスト教において、教義の核心を指す言葉として「神秘(mysterium)」の語が導入される。(2)中世末期〜近世初期:スコラ学的理性による合理的思弁よりも超理性的直観ないし情念的個人経験に基づく多彩な言説が産出され、それが「神秘神学(theologia mystica)」の名のもとに一括されて、或る自立性を獲得する。(3)十九世紀後半〜二十世紀前半:とくに「神秘体験(mystical experience)」概念を中心にした宗教現象としての「神秘主義(mysticism)」が、ヒンドゥー教の一元論思想を典型に、キリスト教の枠をこえた宗教学的術語として成立し、古今東西の宗教や哲学の核心に神秘体験を見る態度が流行する。((4)但し、こうした傾向は神秘主義概念の一種のインフレーションを生み、またこの語が宗教学のみならずこれに影響された宗教家自身によっても使用され、また通俗的にも頻用されるようになるに及んで、現在では学問的概念としての有効性を喪失しつつある。) この見通しについての議論は、上記の著書の随所でも開陳した(とくにI-4章、III-1、3章)。また、昨年九月の日本宗教学会でのパネル討論では、近代日本での神秘主義理解の一典型として、西谷啓治の神秘主義研究の意義について研究発表した。同じく東京大学文学部の講義では、近代日本における上記(3)の意味での神秘主義受容の経過を論じた。これらの成果は、より詳細な検討を交えて、今後随時発表していく予定である。
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