本研究はアジア型「獅子」像の比較図像史の研究である。とりわけ日本と中国・東アジアをむすぶ結節点としての沖縄八重山地方における古典的工芸と伝統芸能における「獅子」像の研究に重点がおかれる。沖縄八重山地方における伝統芸能は近年(平成7〜8年度)になってようやく復興の気運が昴まり、地元若者たちによる保存運動が活発におこなわれはじめた。にもかかわらず、この伝統芸能の研究は、従来、民族学あるいは文化人類学的文脈において非学際的かつ部分的に調査がおこなわれるにとどまっていた。本研究はこれまでのそうした学術的限界をこえるために、沖縄八重山地方における伝統芸能、(1)学際的・横断的文脈において把握する。すなわち汎アジア的規模において美術史(芸術史)の文脈から伝統芸能の様式美を地域文化史的に分析比較をおこなうものである。 具体的な研究対象は、(a)沖縄八重山地方における獅子舞と(b)日本本土[主として関東と関西]の獅子舞、そして(c)アジア系諸外国[シンガポール、香港、中国本土、米国のチャイナタウン等]における獅子舞におけるそれぞれの獅子面、振付け、伴奏音楽、装置等の様式的差異の分析、さらに(d)獅子舞とシーサーと狛犬とマ-ライオンの図像史の比較分析、最後に(e)図像としての「獅子型」を利用した映画におけるオリエンタリズム[西欧人によるアジア人表象]のイコノグラフィの類型分析である)。 そしてこれらのパフォーマンスと図像を(2)高解像度ヴィデオにより記録化し、それを本研究成果の英語文書とともにインターネット上で世界的に公開することによって、各国の研究者と情報交換ならびに国際交流をおこない、本研究の精度をあげる。 汎アジア的規模において「獅子像」のヴァリエーション(獅子舞、シーサー、狛犬、マ-ライオン等)を比較図像史の観点から横断的に分析しようという試みとその研究成果のインターネット上での公開は、これまでおよそ皆無であり、予想以上の興味深い研究成果が期待される。
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