研究概要 |
本研究課題は,平成9年度の一年計画であった。本研究では,まず第一に,研究目的を達成するために必要な実験装置の構築を行うことが重要であった。これまでの研究から,視覚的ストレスを発生させる効果の高い視覚刺激は,特定の時間的・空間的周波数特性を有していることが示されている。したがって、多種多様な空間的特性を有する視覚刺激を,精密な時間的制御で提示すると同時に,その色度も正確に把握することのできる実験装置を構築する必要があった。そこで,そのような目的に最適なCambridge Research Systems社の視覚刺激提示装置VSG2/3システムを基に実験装置の構築を行った。このシステムによって、高解像度カラー・ディスプレイ上に,多様な空間的特性および色度特性をもつ視覚刺激を,精密な時間的制御で提示することが可能になった。ただし,上記の視覚刺激提示装置VSG2-3システムの納入時期の遅れと刺激提示用高解像度カラー・ディスプレイの故障などにより実験開始が大幅に遅れたため,残念ながら現在はまだ予備実験の段階に留まっている。しかし,今後は本実験装置を用いて,(1)視覚刺激の空間周波数特性以外に,視覚的ストレスに関連する刺激要素の形態的特長が存在するのか(あるいは,しないのか);(2)同様に,視覚的ストレスに関連する刺激要素の色彩的特長が存在するのか(あるいは,しないのか);(3)前記(1)および(2)における個人差の有無とその様相:などに検討を加えてゆく予定である。偶然ではあるが,テレビ・アニメーションが原因と考えられる昨年の12月の子供を中心とする大量の発作の発生は,本研究課題がいかに重要であるかを具体的の示した実例と考えられる。この事件については,現在様々な方面から考察されているが,その解明をも視野に入れた実験を行うことも計画中である。
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