国際協力、あるいは、国際教育協会の分野においては、これまでも、さまざまな援助や協力が行われてきた。しかし、従来は、援助や協力の実態が先行し、これらに関する体系的な研究は、きわめて不十分な状況にあったといわざるをえない。 国際教育協力の分野では、ユネスコの教育白書(1993年版)が指摘するように、資金を支出する主体が、二国間から他国間機関、とくに銀行や基金へと移ってきている。その中でも、世界銀行が教育協力の分野で主要なプレーヤーとして登場してきたことに注目する必要がある。そして、問題の本質は、世界銀行などの教育プロジェクトにおいて、経済的な視点だけが考慮された改革案でありながら、その対象が当該国の教育内容や制度の全般に及んでおり、しかも、物質的インフラに対する援助を梃子として、その実施が途上国に対して強制されていることである。世界銀行の教育事業に対する融資案件で問題となった事例は、その多くが、世界銀行側において、途上国における教育事業のあるべき姿を描き、それを借り手側である途上国に押し付け、借り手側が本来持っていたはずのニーズに考慮を払わなかったというものである。 こういう教育援助・協力の実態を是正していくためには、教育協力の体系的研究、すなわち、国際教育協力学の構築が必要であるといわなければならない。本研究では、国際教育協力学の構築の必要性を示すとともに、その方法論として、脱西欧的アプローチ、内発的アプローチ、総合的アプローチおよび協力的アプローチの4つを導き出し、これら4つを統合することにより客観的な認識に到達することが可能となり、それを通じて、国際教育協力学の構築も可能になることを明らかにした。また、途上国の教育開発と教育協力に関する諸外国の研究者、行政官、教員等に対するアンケート調査から、国際教育協力学の可能性とその方向を示した。
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