研究概要 |
戦後の「自由大学」の実態を調査するために、現在その活動があったということが確認されている地域を中心に、当時の新聞記事や関係資料の調査と現地の聞き取り,また自治体史や地域の研究誌などに掲載されている先行研究の確認などの作業を継続した。ただ、全地域を網羅的に調査することはできなかった。また、直接運動にかかわった人物も、生存者が少なく,当初の予定通りにはいかない面が多々あった。 今年度は広島県の尾道,三原などの地域と、これまでの研究の補充調査などを実行し、新聞資料や聞き取り調査を実行した。新聞資料の確認は、数年分見るだけで相当な時間がかかり、その成果については現在整理中である。 地域的には長野県の上田・松本・中野・飯田・伊那などを中心としての活動や、東京都三多摩地域のように、西・南・北多摩地域がいくつかの拠点を持ちながら、お互いに影響を与えながら展開した地域,同様に静岡県の熱海・磐田・三島地域など広範囲に影響を及ぼしながらほぼ全県的な規模で展開をした地域と、群馬県前橋・埼玉県本庄・神奈川県鎌倉・茨城県土浦などのように、地域的には単独でそれぞれ展開した地域とがあることが確認された。 それらの地域の運動の原点や担い手は共通する面があり、ひとつは大正デモクラシー期における「自由大学運動の経験者あるいはその影響を強く受けた世代が指導的な役割を果たしている場合、また東京に本部がある自由懇話会からの呼びかけに答える形、その支部活動の一環としての運動など、その状況はいくつかのパターンがあることが確認された。 今後は、自由懇話会との関係(特に,指導と同盟)、地域のほかの文化運動とのかかわりなどを視野に入れた研究に深化させていく必要がある。
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