1.本年度は、本研究の最終年度として、東北大学狩野文庫、京都大学附属図書館、国立国会図書館、東京大学法制史資料室等への史料調査・収集を実施するとともに、その収集した史料を、特に都市政策の立案と実施の観点から分析することに集中してきた。 2.その結果、まず都市政策の立案に関して、支配者は従来イメージされていたような独断専行といった形式ではなく、いわば民意とのキャッチボール的な手法によって数多くの政策を立案していることが多いことを明らかにすることができたと思われる。そしてこの手法は、近代以降の為政者と市民との関係をも規定していると考えられるのである。 3.また、都市政策の実施に関しても、為政者は尊に法令を発令するだけでなく、その実効性を高めるために種々の工夫をこらした方法を採用していたことを具体的に示すことができたと思われる。 4.以上のような観点から、「近世後期江戸の三廻りと『風聞書』-都市政策の新たな民開の一側面-」と題する論文を執筆し、現在『年報 都市史研究』に投稿中である。
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