研究概要 |
1.金融恐慌記事データベースの作成:複製を収集できた昭和金融恐慌当時の各地主要日刊新聞36紙を対象に,金融恐慌の各過程に関する記事の掲載日時と掲載面積をデータベース(文字データ)化し,情報伝達の量と速度について全国的な偏差を検討した.その結果,4銀行休業までの前半過程において大きかった掲載面積の地域的な差異が台湾銀行休業以降の後半過程で縮小することが確認できた.報道内容の比較検討のために,見出しの大きさと幾つかのキーワードの使用状況をデータべース化してみたが,実際の紙面から受ける印象との間にはやや乖離があり改良が必要である.さらに,見出しには必ずしも登場しない重要事項や写真の有無等を含めて,各紙の報道内容を一定程度客観的に比較しうるようなデータべースの構築を模索中である.文字データべースと連動した新聞記事のデジタル画像データべース化の試みは,仕様・価格面の難点を克服できず,実現に至らなかった. 2.金融恐慌情報の受容過程の研究:金融恐慌に関する情報の受容過程をミクロ的に分析するために,地方史史料や日記・手記類等の調査を行なったが,金融恐慌に関する記述はあっても,その際の情報受容にまで言及したものはごく限られており,十分な成果を得ることはできなかった. 3.他時代との比較:昭和金融恐慌に関する情報流通の歴史的特徴を,他の時代での経済危機に関する情報の流れ方と比較して把握するため,1890(明治23)年恐慌に関する報道の分析作業に着手した.
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