研究概要 |
平成10年度においては、次の2点について研究をおこなった。(1)旧東ドイツ地域における旧国営企業の民営化を推進してきた「信託公社」(THA)の後継機関である,連邦政府の国家行政機関となった「統一特別連邦公社」(BVS)による残存旧国営企業の民営化と,民営化された企業の現在の経営状況について民営化時点で取交された契約事項の邁守のモニタリング・システムおよび経営実態の調査分析をおこなった。その結果、多くの企業においては、契約事項の邁守がみられるものの,一部外国系企業(特に韓国系企業)においては,民営化企業の取得後,親会社が倒産し,経営の継続性が困難になり,BVSが再取得し、さらに再売却されるという事例や,BVSによる経営モニタリングから,一応経営は継続しているものの,業績が上がらない上がらない,BVSがさらに資金援助をおこなうといった企業も少なからず見られる状況にある。したがって必ずしも民営化そのものは,他の社会主義国であった国々よりも成功の度合が高いものの,その後の経営が期待していたものに到達していない実態が明らかになった。またTHAと重なり,BVSの企業への追加的資金支出は,連邦政府の財政支出になり,BVS自体の行動原理は,THAと自ずと異なっていることも明らかとなった。これらについては,平成11年1月に経営学会九州部会で学会発表をおこなっている。 (2)平成10年8月に中国丹東市を中心に中国国有企業および中国型民営化である有限公司の経営実態についての意見交換および国際会議での中国の民営化の際の企業評価の算定方法についての検討・評論を受けた。意見交換・討議・評論の過程で,有限公司の経営者の多くが,必ずしも市場経済システムの認識が欠けていること,いわゆる部門別の専門的経営スタッフの絶対的不足ということが明らかになり,そのことから,現在中国が直面している経営の困難さの基本的なものが,それに起因していた。これについては,現在執筆中である。以上
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