研究概要 |
2次元球面上にn+1点をとり,基点と呼ぶ.基点のうちのどれか2点を両端とする単純曲線をコードとよぼう.するとコード全体に右側自己分配的な代数系(Rack)の構造がはいる.ある方法で標準形を対応させることによって,各コードは階数n-1の自由群の元(ただし,この自由群の指定された生成元の一組には線形順序が決まっている)の「最小の」生成元により生成される無限巡回部分群による左剰余類によって表される.いま,二つのコードx,yがそれぞれ,自由群の元U,Vに対応するとき, xにyを(Rackの積により)掛けて得られる元zに対応する自由群の元Wは,初めのUとVから計算されるはずである. 本研究の成果は次の通りである.まず,WをUとVから代数的に計算する方法が確立した.これは現在論文を準備中である.表題の「量子逆元」はxとyの基点が共通の場合に現れる.次に,上記Rackに自然に付随する群(Associated Group;随伴群)の中心の構造を決定した.結果は,nが奇数なら中心は無限巡回群と位数2の群の直積であり, nが偶数なら,中心は無限巡回群である.これらについての論文は一応プレプリントが書き上がっているが,現在修正中である.以上の成果は,球面上のレフシェツ・ファイバー空間の分類に関連することはほぼ確定的であり,今後の研究はその方向に展開するはずである. なお,これらの研究に密接に関連する論文が,研究期間中に2つ出版された.「研究発表」欄を御参照下さい.
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