研究概要 |
平成11年度は,いわゆるcompressedな凸多面体についての基礎理論を構築することを念頭に置いて研究を継承した.その基盤となる作業仮説「一般の超単体はcompressedである」を証明することを基礎理論を構築するための突破口と考え,思索を重ねた結果,Birkhoff-von Neumann凸多面体に付随するtoricイデアルが任意の逆辞書式順序でsquarefreeなinitialイデアルを持つという顕著な成果を整数計画の枠内で捕らえることの有効性に到達した.一般に,凸多面体は有限個の不等式で定義されるが,それらの不等式がすべて等式になっている状況にしばしば遭遇する.我々が得た重要な成果の一つは「すべての頂点のすべての座標成分が0乃至1である凸多面体が等式によって定義されるならば,その凸多面体はcompressedである」という至って簡潔な定理であるが,その波及する効果は絶大である.第1点として,その直接の帰結として懸案であった上記作業仮説が直ちに証明できることが挙げられる.第2点として,perfectな有限グラフの理論を借用すると,たとえば,純な有限半順序集合に付随する凸多面体がcompressedであるという鮮やかな結果が瞬時に従う.第3点として,当該定理の仮定で要求される等式の部分はいささか工夫を施すことによって,適当な条件を満たす不等式に置き換えることが可能である.その結果,有限半順序集合から構成される順序凸多面体などの類についても当該定理が有効となり,compressedな凸多面体の著名な類を大量に生産することが可能となる.将来的には,第2点で触れた perfect な有限グフラフについての永年の予想(強perfectグラフ予想)の解決に向けて,我々の構築しつつある理論の応用を探ることも重要な課題である.
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