研究概要 |
1983年から1999年までの16年間の隠岐島での大気中メタンスルホン酸濃度の季節変化,経年変化をこれまで継続採取し保存したサンプルを用いて明らかにした。サンプルは,1ヶ月毎に採取されているので1ヶ月平均値として,他の気象パラメータと比較した。気象パラメータとして,海洋の各2度メッシュの表層100mでの温度,季節毎に行われている観測船によるプランクトンデータ,Southern Oscillation Index(SOI),Pacific Decadal Oscillation(PDO),隠岐島での気温,雨量などを83年から97年まで解析しその相互関係を調べた。メタンスルホン酸は毎年4月から6月に季節変化を行うが,そのピークの大きさは,SOIが高いときは全般的に高くなっていることが多かった(例えば84年,88年,89年,99年)。逆にSOIの低い(すなわちエルニーニョ現象の)時は,メタンスルホン酸濃度は低い傾向を示した。水温との関係をみると,日本海の島根県沖や九州の沿岸の東シナ海,太平洋の水温と弱い逆相関が見られた。エルニーニョの年の水温は多くは高温に推移しており,逆にラニーニャ時には低温に推移している。これらのことは,海洋の生物生産と気象の相互関係が強くあることを示唆しており,温暖な気象は日本域での海洋生産をむしろ弱める可能性を示している。 一方,南半球での南極,オーストラリア海域ではエルニーニョ時の生物生産はむしろ増えるという観測結果が出されており,海域による違いが明らかにあるらしいことがはっきりした。
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