研究概要 |
最終年度である本年度は,生成および続成環境の異なる石灰岩試料を採集し、石灰岩に残された流体包有物から得られる情報と野外観察から得られる堆積学的古環境情報の整合性を確認することに主眼をおいて研究を行った。 用いた試料は,秋吉南台の大阪住友セメント秋芳鉱業所内で採集した(〓山・長井)。同鉱山切り羽には大規摸な白色方解石脈が露出しており,灰白色および暗灰色の化石を含む石灰岩が,貫入した岩誠によって大小さまざまな各礫に破砕されている。採集した試料について,秋吉古生物礁形成後の構造運動や中生代の火成活動の影讐などを読みとるために,方解石脈岩中の流体包有物の検鏡を行った(田口・〓山)。また、礁石灰岩から採集したウミユリ化石片を用いて,生物骨格内の流体包有物についても検鏡を行った。 その結果次のようなことが明らかになった。 (1) 堆積物粒子間の透明方解石や,化石骨格の中に保存された流体包有物は均質化温度が低温であることが予想されるのて,研磨中に試料を高温にしないための工夫が必要であることが明らかになった。 (2) 生物骨格内に多数保存されている流体包有物は,サイズが極めて小さいため,微小部分に対応した機器を追加使用することで,新たな展開が可能であることを確認した。 (3) 方解石脈の包有物を観察した結果,3試料から均質化温度(TH=176.0,177.2,179.6℃)と氷融点温度(Tmlcc=-0.5,-0.1,-0.7℃)の値が得られた。この氷融点に相当する見かけの塩濃度は,それぞれ0.88,0.17,1.19%である。これらの流体包有物は.秋吉石灰岩が付加された後に,貫入火成活動の影響で破砕され,熱水の影響下で形成されたものであると考えられる。礁斜面下部に崩蓄した岩片間を埋めた脈岩ではなく,付加過程での構造的な破壊された直後に,続成過程で形成されたものでもないことが明らかになった。
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