研究概要 |
指向性の強い単色性高密度光子源であるレーザーによる光励起場を利用して、高密度多光子による配位子脱離を誘起し、きわめて反応性の高い金属原子"裸の金属"(naked metal)を現出させることによって、これを、ドラスチックな電子軌道配置変換により励起状態にあるクラスター物質の結節点として用いて、次元制御された複合電子系新物質の合成を試み、構造次元制御による機能性分子集合体系物質を創製することが本研究の目的である。この目的のために、355nm単色高密度光が得られるYAGレーザーを備品として購入し、光脱離性配位子であるCO配位子をもつ遷移金属カルボニル錯体であるFe(CO)_5およびM(CO)_6(M=Cr,Mo,W)から有機溶媒中で活性金属種が生成することを確かめた。さらに、超音波励起に関しても検討を行い、フラーレンC_<60>と生成した反応活性な"裸の金属"との反応によって、黒色粉末状のバルク非晶質物質が得られることが確かめられた。これらの付加体を出発原料として、さらに電解結晶成長法による単結晶化を試みたが、現在までのところ結晶物質は得られていない。しかしながら、とりわけ鉄の系ではこのアモルファス生成物が強磁性的挙動を示すことが見い出され、物性的観点から極めて興味深い結果といえる。次元制御された複合電子型クラスター物質は、電気伝導性などの物性機能ばかりでなく、電子的にも空間的にも制御された反応場を提供することができると考えられるので、今後これらの物質の新規な機能発現もさらに検討を進める予定である。
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