研究概要 |
浅間山中腹の標高1500mのミズナラ林で、240個設置した巣箱に入ったヤマネとヒメネズミにマイクロチップ(以下にチップと略す)を装着し、チップが野外研究にどの程度活用できるかを探った。 獲得されたヤマネ75個体、ヒメネズミ25個体の捕獲全個体にチップを装着した。チップはチュープに入れて首輪状に装着するか、首背部に埋め込んだ。どちらの装着方法でも、チップのID番号は、巣箱の外側から容易に読みとれた。従って、巣箱を開けるなどの人為的な影響を与えずに、巣箱利用についてのデータが手に入った。2-3個体が巣箱内で同居している場合でも読み取り機を巣箱の各側壁にそって探査をすると、同居中の複数個体のID番号が読みとれた。首輪状に装着したチップは、チュープを噛んだり、首輪がはずれるなどが生じたので、調査期間後半は直接体内に埋め込んだが,埋め込みによる影響はほとんど認められなかった。 この調査により、個体ごとの巣箱を結んだ行動圏が得られ、多くの個体の行動圏が重複していることがわかった。ヤマネでは、同時に同じ巣箱に血縁関係や非血縁関係の2-3個体が同居することも起こった。さらに、繁殖期のオスのヤマネは、ほぼ毎日泊まり場を変え、1つの巣に滞在する平均日数は1.17日であった。このような「風来坊」のような不安定な巣箱利用は、ヤマネがdaily torporするために、巣材という保湿材が不要であるからと推定された。 これらの結果から、当初の目的どうりにチップが野外研究に有効であることが実証された。この研究はさらに2年間継続の予定である。研究成果は1997年10月の日本哺乳類学会で「ヤマネの自然巣・巣箱の利用パターンと奇妙な社会関係」、「マイクロチップを利用した小哺乳類の野外調査法」の2題を発表した。
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