研究概要 |
通常の固相反応法により、約1000℃の高温で焼成して得たSr_2CuO_<3+y>の過剰酸素量はy〜0であるが、複合金属水酸化物 Sr_2Cu(OH)_6を約400℃という低温で焼成するとy〜0.1の相が得られる。また、Ba_2CuO_<3+y>薄膜を350℃以下の低温でオゾン酸化すると、過剰酸素が導入されて超伝導を示す.そこで、複合金属水酸化物(Sr_<1-x>Ba_x)_2Cu(OH)_6を合成し、600℃以下の低温で焼成することにより、過剰酸素が導入された(Sr_<1-x>Ba_x)_2CuO_<3+y>を合成することを試みた。 まず、前駆体(Sr_<1-x>Ba_x)_2Cu(OH)_6を合成した。Cu(NO_3)_2水溶液に高濃度NaOH水溶液を加え、その後、Sr(OH)_2+Ba(OH)_2混合水溶液を加えた.複合金属水酸塩は沈殿物として得られ、粉末X線回折の結果、Baが系統的に置換されていることがわかった。次に、得られた前駆体(Sr_<1-x>Ba_x)_2Cu(OH)_6を酸素、または窒素中で12時間、様々な温度(200-600℃)で焼成し、粉末X線回折により相を同定した。300℃以下ではアモルファスであったが、400℃という低温で(Sr_<1-x>Ba_x)_2CuO_<3+y>が得られた。過剰酸素量がy〜0,〜0.1,〜0.3の3つの相が存在し、焼成温度が低温になるほど、また、Ba量が増えるほど、過剰酸素が導入されることがわかった。これは、低温ほど酸素のイオン半径が小さくなり、また、イオン半径の大きなBaが増えるほど酸素は金属イオンに配位しやすくなるためと考えられる.すべての試料で超伝導転移は観測されなかった。まだ、過剰酸素量が足りないと考えられ、さらに低温での合成が必要とされる。 この合成法は、複合金属水酸化物前駆体の合成が難しいが、OH基が低温で遊離するため、また、陽イオンが原子レベルでミクロに混合されているため、400℃という低温での試料合成が可能であることがわかった。
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