研究概要 |
逆問題の背後には整然とした数理構造が有り,この構造を考慮することにより,逆問題の解析で障害となる不適切性に対し最良の対処ができる.本研究の目的は,固体の境界値逆問題の数理構造解明による適切化された逆解析解法を確立することにある.このためまず,逆問題の数理構造解析を固体の境界値逆問題に適用し,誤差の拡大率を表す条件数を評価する.特異値分解とランク低減を組み合わせることにより適切化さらた逆解析手法を適用する. 平成10年度に得られた主な研究成果は,以下の通りである. 1. 弾性体の境界値逆問題の数理構造を理論的に明らかにした.過剰規定境界値をモード分離し,不完全規定境界における未知境界値の推定結果に対し,過剰規定境界値の各モードがどのような影響を及ぼすかを,定量的に明らかにした.境界要素法を用いた境界値逆問題の解析における,ランク低下に伴う条件数の変化を予測し,最適条件数法により,最適ランクを推定した.推定されたランクは,最適な値に近かった. 2. 境界値逆問題にTikhonovの適切化を適用するに際して,計算量を少なくする新しい手法を提案し,接触応力分布を推定する境界値逆問題に適用し,その有効性を確認した.また,適切化パラメータに対しV字型の変化を示す条件数と最適条件数との交点のうち,小さい方の適切化パラメータを採用することにより,適切化パラメータを推定する方法を提案し,その有効性を示した. 3. 接触力分布を推定する問題に,関数展開法とTikhonovの方法を適用し,両者の比較を行った.適切化パラメータの推定には,Akaikeの情報量基準と食違い量原理を用いて,適用性を明らかにした.
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