研究概要 |
本研究は,発電の水蒸気サイクルに用いられる復水器や,空調機器における凝縮器などに使用されている高性能凝縮管の伝熱性能の一層の改善を目的として平成9年度より開始された. これらの凝縮管では,通常伝熱面積の増大と熱伝達率の向上のために,管外面にローフィンが加工され,その高さ・ピッチ・形状などを最適化するよう工夫がなされている.しかし,水蒸気の凝縮では,水の表面張力が大きいため,凝縮液がフィン間に滞留し,有効な伝熱面積が大幅に削減され,伝熱が劣化するという問題が生じる. 本研究では,電場を利用してフィン間に充満する凝縮液を排除するという,伝熱促進の新しい方法について以下のような実験を行い,いくつかの有用な知見を得た. 実験では,凝縮室内に平滑円管あるいはローフィン付き円管を水平に設置し,管内に冷却水を流して,凝縮室内の水蒸気が円管外面上で凝縮するようにた.水平管の底部側に,管底から1〜2mm離して電極線を1本水平に張り,これと凝縮管との間に直流電圧を印加した.この印加電圧をある値以上に大きくすると,平滑管外面上あるいはローフィン間に滞留していた凝縮液が電極線に引き寄せられ,その結果凝縮液膜厚さが薄くなったり,有効凝縮面積が増えて熱伝達率が増大した.具体的には, 1. 水平平滑管における熱伝達率として,本実験では最大1.26倍という値を得た.また,ローフィン付き凝縮管については,最大伝熱促進率として2.4を得た.後者の数値は,これまでに提案されている他の方法と比較して有意に高い値である. 2. 観察によれば,ローフィン付き水平凝縮管の場合,熱流束一定の条件で印加電圧を上げていくと,ある電圧で急激に熱伝達率が増大する.この現象は,凝縮管底部から流下する凝縮液が,液膜状から液柱状に変化することに対応していることがわかった. 3. 電場を印加した場合に流れる電流を測定して消費電力を求めたところ,消費電力は伝熱促進量に対して最大約7%であった.
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