研究概要 |
冷却壁への水蒸気凝縮は,運動エネルギーの低い水蒸気分子が壁面に吸着することにより生じると考えられる.本研究では,水蒸気分子を誘電体表面に発生するエバネッセント波により活性化することにより,誘電体を冷却壁とするその表面への水蒸気凝縮が抑制できるかどうかについて実験的検討を行った. 冷却壁表面にエバネッセント波を発生させるために,冷却壁には最低辺側を鏡面コートした台形プリズムを用意し,その斜辺から光を入射させて短上辺側にエバネッセント波を発生させた.プリズムは,長底辺を冷凍機からの冷媒で冷却されるタンク表面に設置され,熱伝導により冷やされた.光源としては,水蒸気のふく射の吸収スペクトル(1.39μm)を赤外線発信する,出力2mWの半導体レーザーを用いた.また,凝縮量は,He-Neレーザーを冷却壁上面(凝縮面)に照射し,凝縮液滴による散乱光を光電子増倍管で検出することで計測した.冷却壁表面の温度については,エバネッセント波の発生を妨げないように,赤外線画像カメラにより計測した. 実験は通常の空気雰囲気中で行われたが,エバネッセント波による冷却壁面への水蒸気凝縮の抑制は観察できなかった.この理由としては,エバネセント波の発生する極めて狭い領域(壁面上1波長程度)において水蒸気分子に十分なエネルギーを供給できないことがあげられるが,その他の理由として,酸素や窒素などの不凝縮気体の影響が考えられる.エバネッセント波により水蒸気分子がエネルギーを得ても,周囲の低エネルギー不凝縮気体分子にエネルギーを吸収されることは十分に考えら,この場合,凝縮は抑制されない.今後は,不凝縮気体を排除した水蒸気雰囲気中でエバネッセント波の凝縮に与える影響を検討する必要がある.
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