研究概要 |
マイクロホール素子を用いてテープ材料の表面上で 2次元的な磁場分布を計測するためのマグネトメトリーを製作した。これを利用して,実用化が有望な銀シースBi系2223相高温超電導テープ線材の表面での磁場分布を測定し、電磁気学的考察に基づいて輸送電流経路を追求し,線材の臨界電流密度J_Cを支配する要因の解明と向上に向けての研究を行った。実験結果の要約を以下に示す。(1)単芯テープ表面における残留磁場分布は超電導コアの形状を反映したほぼ対称的な分布になった。この分布から,超電導コアの内部にはクラック等は存在せず,またコアは均一に形成されていることが分かった。試料に圧延または一軸プレスを施し,人工的にクラックを導入して残留磁場分布への影響を調べた結果,圧延加工の場合にはある条件下ではコア内部で幅方向にクラックが誘発されることが明らかになった。このようなクラックは熱処理によっても修復されないため,最終的にテープの長手方向の電流経路を遮断してJ_Cを低下させると考えられる。(2)単芯テープにおける局所的なJ_C値(電流容量)は超伝導コア内の場所場所で変化し,試料幅方向で考えると端で最も高く中央で最も低くなることが示された。このようなコア内での電流容量の分布は,超電導粒の大きさ及び配向性,不純物異相の割合等の微細構造因子の場所による変化によることが判明した。(3)超電導単芯及び多芯テープ線材に種々の直流電流を通電してテープ表面での自己磁場分布を測定し,超電導コア内での電流分布を研究した結果,電流分布は多芯化によって変化しないことが判明した。この事実は,通電時に生じる磁束線の挙動が多芯化によっても変化しないことを意味し,テープ線の場合には超電導コアの多芯化は必ずしも交流通電損失の低減に結び付かないことが判明した。
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