研究概要 |
本研究では,磁気歪み効果を有する薄膜材料を利用したコンタクトレスの新しいマイクロマシンシステムを構築するための基礎研究を行った.近年,マイクロマシンの研究の進展は目覚ましく,さまざまな方法で微細アクチュエータが試作されているが,コンタクトが不必要なアクチュエータの開発が強く求められている.磁気歪み効果とは,磁場によって材料が伸び縮みする性質のことである.磁場を一様に印加すれば,この効果はコンタクトレスのマイクロマシンに応用が可能であり,将来の重要なマイクロマシン技術となるポテンシャルを秘めている.本研究では,磁気歪み薄膜材料とシリコンVLSI技術を組み合わせた新しいマイクロマシンシステムの構築を目標とした. 本実験では,磁気歪み効果を利用したアクチュエータとして,単結晶Siのカンチレバ-上に磁気歪み薄膜を堆積した構造を用いた.磁場を印加すると薄膜のみが磁気歪み効果で伸張するので,カンチレバ-は下方向に曲がる.従って磁場をカンチレバ-の共鳴振動数で印加すると,カンチレバ-は磁場の大きさに比例した振幅で振動する.磁気歪み効果をもつ材料としては,(Tb0.27Dy0.73)Fe合金を用いた.この組成のバルク材料をターゲットとして用い,スパッタリング法で薄膜を堆積させた.まずはシリコンの棒状のバルク結晶(長さ数ミリ)に薄膜を堆積し,磁場を印加してその曲がり具合を評価することにより,磁気歪み薄膜の歪み率を測定した.一方,Siプロセスとの互換性を得るため,スパッタ薄膜のドライエッチングプロセスを確立した.また,スパッタ後の熱処理等のプロセスによる磁気歪み率等への影響を詳細に評価し,Siプロセスとの整合性を検討した. 以上の方法により,シリコンカンチレバ-が磁場により振動することを確認した.これらの基礎データを用いて,マイクロアクチュエータを集積したマイクロメカトロニクスシステムに応用していく予定である.
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