研究概要 |
平成9年度に角錐ホーンアンテナの内壁を電波吸収体で被覆した構造はアンテナの指向性パタンや交差偏波特性を改善する効果を持つことを確認した.平成10年度は,これらの特性をより精密に評価するために,アンテナからの放射波を精度良く計算する近似解法について研究を行った. 従来,ホーンアンテナからの放射界の計算は,開口面で仮定した電磁界分布を用いたキルヒホッフ近似式によって行っている.しかし,この方法では放射波の主偏波成分は精度良く近似することができるが,交差偏波成分の近似は極めて精度の悪いものであった.その理由は,開口面に仮定した電磁界分布に交差偏波成分が無い場合は,放射界の交差偏波成分も極めて小さくなるからである.従来のキルヒホッフ近似のように開口面に仮定する電磁界が入射波だけである場合は,放射界の交差偏波をうまく評価できないのは当然である.本研究では,ホーンアンテナの開口面でキルヒホッフ近似の条件に加えて電磁界の連続条件を用いることにより,ホーンの開口による散乱波を考慮に入れた解析を行った.その結果,従来の解析では評価の難しかった交差偏波の指向特性もよい近似精度で求めることが可能となった. ホーンアンテナは簡単な構造であり標準アンテナとして利用されることが多い.このようなアンテナの放射特性を簡便に解析する方法を得たこと.及び角錐ホーンアンテナの特性向上のためにホーン内の電界に垂直な壁に電波吸収体を装荷することが効果的であることを確認できたことが本研究の成果である.
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