本研究は、塩水の遡上と潮汐の影響により、流量の把握が困難な河口密度流場における新しい流量観測システムの構築に向けて、超音波ドップラー流速分布計(ADCP)による流速と密度構造の同時計測の可能性について評価を行うとともに、流量観測へのADCPの適用性について検討を行うことを目的としている。 昨年度と同様に、弱混合河川である北海道石狩川において、河口上流14.5km地点の流心河床にADCPを設置した定点観測を1998年6月30日〜7月23日に実施するとともに、新たにADCPを船舷に取り付けて河口から上流15kmまでの流況・水質の縦断観測も行った。また、ADCPデータより抽出される密度境界面情報と実際の密度構造を比較するために、同時刻にSTDによる水温・塩分の鉛直分布測定と、メモリー式小型水温塩分計による連続観測を行い、ADCPの出力特性を明らかにした。その結果ADCPの反射強度の極大水深は塩淡水の境界面位置とほぼ一致しており、その経時変化と流速変動は従来の観測や実験によって得られた潮汐応答特性と同様の傾向を示し、より詳細な変動を捉えることができた。さらに、抽出された密度境界面の位置と流速値を基に、上層および下層の平均流速、単位幅流量の算定を行った結果、ADCPを用いれば十分な精度で感潮域の流量の算定が可能であることが明らかとなった。また、得られた淡水厚と平均流速を基に連行係数を算定し、下流への塩分輸送を予測したところ、実測値と良い一致が見られ、ADCPを用いて流況をモニターすることにより、リアルタイムの塩分拡散予測も可能であることがわかった。さらに、緩混合河川への適用性を評価するために、青森県高瀬川において同様の観測を実施した結果、弱混合河川と同じく十分な精度で流量と塩分輸送量の算定が可能であることもわかった。
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