研究概要 |
本研究は3年継続で行ったもので,初年度は,緑環境の指標化手法と実態調査,及び既往研究論文・東京区部の自治体における緑化計画,学校緑化コンクール(農水省主催)に関する資料収集を行った。 まず樹木の測定方法を検討し,実態としての樹木の大きさや樹種を調べ,3年間で30校(東京,酒田,長岡,金沢,兵庫,島根)の樹木実体図を作成した。これらのデータから樹木の種類,大きさ,緑被率(敷地・空地),樹木体積と建物体積の比率など緑環境の指標となりうる項目と諸データを得ることができた。 2年度目は,物理的な実態に加え,緑環境が人に与える心理的側面からの視点,緑量との違いと心理の関係を明らかにするべく,適量と思われる緑量(緑被率)を模型によるシュミレーション評価実験で行った。6%,18%,48%の3種類の緑被率で実験した結果,緑被率で2割程度が適量であるとの結論を得た。10%以下では少なすぎ,40%以上では暗いイメージが強まることも分かった。 研究の最終年の今年度は,学校敷地周辺,特に通学路の並木に注目し,都市景観として優れた並木の実態とその構造を把握した。また,学校敷地が計画的に緑化された魅力的な緑環境をもつ学校と既成市街地で校舎とグランドだけの学校空間を取り上げ,そこにおける児童の遊びの種類と各空間別(校舎・グランド・緑化されたオープンスペース)利用人数を比較した。その結果,前者の学校の方が遊び内容が豊富で遊びの種類も多く,多様な場所が遊び場となっていることが分かった。 以上の分析結果より,教育施設における緑環境整備に関する,物理的な指標の知見とソフト面の効果の一部を実態を通して明らかにすることができた。
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