研究概要 |
DyCuの帯磁率測定の結果から,Neel点(T_N=63K)以上の温度範囲において,Curie-Weiss則に従っていることがわかった。その勾配から得られる有効磁気モーメントは約10μ_Bであり,この値はDy^<3+>の磁気モーメントの値とよく一致している。また,4.2Kにおいて,強磁場磁化測定を主要3軸について行なった結果,各軸において多段階メタ磁性転移が観察された。特にH//〈111〉では,4段階のメタ磁性転移を含む飽和にいたる全磁化過程が初めて得られた。その飽和磁化は約8.9μ_Bであるが,これはDy^<3+>の磁気モーメントの値よりも小さい。この飽和磁化の減少は,結晶場の影響によるものと考えられる。また,他の2軸についても,H//〈100〉では2段,H//〈110〉では3段のメタ磁性転移が観察されたが,最大磁場38T(30.2MA/m)においても,磁化は飽和に至らなかった。これら転移磁場の温度依存性ならびに転移磁化の大きさを考慮して,各メタ磁性相の磁気構造を提唱した。この構造は単に交換相互作用だけでは得られず,他の磁気的相互作用の存在が示唆される。
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