研究概要 |
β-1,4-キシランは陸上植物細胞壁中に多く含まれる多糖であり,単糖であるD-キシロースがβ-1,4一結合を介して鎖状に連なった構造をとる.キシランのβ-1,4一結合を加水分解する酵素がキシラナーゼである.本研究では,枯草菌が生産するキシラナーゼAの分子進化工学による耐(好)アルカリ性化を目的としている. キシラナーゼA遺伝子の好アルカリ性細菌における発現効率の向上を目的として,Bacillus sp.41M-1株キシラナーゼJ遺伝子のプロモーター・シグナル領域を連結したキメラキシラナーゼ遺伝子を構築し,Bacillus sp.C125株およびBacillus OF4株における発現を試みた.しかしながら,これら二種の好アルカリ性細菌が形成するハローは明確なものではなく,分子進化工学のための宿主としては不適当と判断された. そこで,大腸菌宿主とフィルターアッセイを組み合わせた方法により,分子進化工学実験を行うこととした。キシラナーゼ遺伝子へのランダム変異の導入には,修復能を欠損した大腸菌XL-1 Red株を用いた。変異導入およびフィルターアッセイのサイクルを5回繰り返し,アルカリ性および中性で大きなハローを形成するようになった形質転換体を取得した.しかしながら,このクローンに含まれるキシラナーゼ遺伝子領域には変異箇所は認められず,プラスミドコピー数の増加に伴う生産量の向上が原因であることが明らかとなった.すなわち,XL-1Red株を用いたランダム変異導入の効率は低く,キシラナーゼA構造遺伝子のみならず,ベクターやプロモーター領域に対しても変異を誘発してしまうという欠点が顕在化した.最後に,PCRを利用した変異導入方法について検討を進めた.その結果,目的とする変異導入率を達成することができた.
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