研究概要 |
ルテニウム錯体は三塩基化ルテニウムをはじめ、メタセシス重合活性が古くから知られていた。最近ではGrubbsのトリシクロヘキシルホスフィンをもつ2価ルテニウム錯体の多様な触媒機能が注目されている。 本研究ではペンタメチルシクロペンタジエニル・ルテニウム(Cp^*Ru)活性種の配位子による面規制を制御因子とするノルボルネンの立体選択的メタセシス重合を検討した。 立方体構造をもつ[Cp^*RuCl]_4を触媒とし、極少量の分子状酸素または過酸の存在化に、ノルボルネンを重合させると(60℃,THF中)3〜5日でメタセシス重合は完結し、立体選択的にオレフィン部位がトランス構造をもつメタセシスポリマーが生成した。この重合系における酸素の効果はルテニウム・オキソ結合の生成と、そのノルボルネンとの[2+2]メタセシスによる末端ホルミル基とルテニウムカルベノイド活性種生成にあると推定した。 Cp^*配位子に加え、第2の面規制因子として、共役ジエンを導入したCp^*Ru(ブタジエン)Clをカオチン化して、同様の条件下にノルボルネンを重合させたところ、低収率(8%)ではあるがオレフィン部位の立体選択性が逆転した(シス:トランス=80:20)シス選択性ポリマーを得ることに成功した。 この収率の向上を目的として種々のルテニウム錯体を検討したところ、筆者らが先に開発した。 ルテニウム(π)アリル錯体、Cp^*RuCl(C_3H_4R)、2当量の銀トリフラート、およびトリメチルシリルジアゾメタンの組み合わせから生じるカチオン性ルテニウムカルベノイドが、40℃でR=Hの場合90%収率(シス:トランス=70:30)、R=2-CH_3の場合に64%収率(シス:トランス=81:19)でシス選択性ポリマーを与えることを発見した。
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