研究概要 |
われわれは、(1)新規な有機低分子ゲルの創出、(2)ゲルの凝集形態と分子構造・分子間相互作用との相関の解明、(3)有機低分子ゲル創出のための分子設計指針ならびに三次元網目状組織体構築の手法の確立、(4)有機低分子ゲルの熱可逆的ゾル-ゲル転移の解析、(5)有機低分子ゲルの光・電子機能材料への応用、を目的として研究を行なっている。これまでに、π電子系を含む有機低分子4,4',4"-tris(stcaroylamino)triphenylamine(TSATA)ならびにN,N',N"-tristearyltrimes-amidc(TSTA)が、種々の有機溶媒とゲルを形成しうろことを見いだしている。 平成10年度は、ゲル形成分子の溶液中における電子吸収スペクトルの濃度依存性ならびに温度依存性を検討し、ゲル形成分子の電子吸収スペクトルが分子会合に伴い短波長シフトすることを見いだし、ネットワークを構成する繊維構造中の分子の配向・配列に関して重要な知見を得た。また、TSATAよりサイズの大きなπ電子系を中心骨格に有する新規ゲル形成分子群1,3,5-tris(4-stearoylaminophenylphenylamino)bcnzene(TSA-TDAB)ならびに1,3,5-tris(4-stearoyl-aminophcnylphenylamino)benzene(TSA-TDATA)を設計・合成し、これらのゲノレの微細構造を検討した。その結果、TSA-TDABならびにTSA-TDATAのゲル中で形成される繊維構造はTSATAゲルの場合よりも細かくなっていることを見いだし、中心骨格の違いがゲルの凝集形態に与える影響について重要な知見を得た。
|