研究概要 |
昨年度の研究結果に基づき、研究の進展を計った。1)昨年合成に成功した2官能性カテナンの重合反応を行った。すなわち、4-メトキシイソフタル酸ジクロリド、2倍量の1,1-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、及び、イソフタル酸ジクロリドの環化反応によって合成したカテナンの2つのメトキシ基を水酸基へと変換して重合性のカテナンとした後、塩基存在下セバシン酸ジクロリドとの重縮合反応を行った。その結果、最高で20量体程度ではあるがカテナン骨格によって高分子鎖が構築された目的のポリマーを得ることができた。2)アミド基の水素結合性をうまく利用してカテナン骨格を形成させる点では同じであるが、前出のものよりも自由度の大きな骨格からなるポリマーを合成するために、別の骨格をもった重合性カテナンの合成を検討した。これは、4-ヒドロキシキシイソフタル酸誘導体、2倍量の4-(アミノメチル)フェノール、および、直鎖状の脂肪族ジカルボン酸ジクロリドの3成分を環化させ、2官能性カテナンを合成しようという試みである。まず、4-ヒドロキシキシイソフタル酸の水酸基の保護基の検討を種々行ったが、適当なものを見出すこと出来なかった。そのため、現在、脂肪族ジカルボン酸ジクロリドのアルキル鎖への官能基の導入を検討している。3)クラウンエーテルとアンモニウム塩の錯形成を応用することによる重合性ロタキサンの合成を検討した。まず、カテコール、2-[2-(2-クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、及び、3,4-ジヒドロキシ安息香酸エチルから4段階でカルボン酸残基を有するジベンゾ-24-クラウン-8を官能基性の環の部分として合成した。次に、3,4-ジ-tブチルフェノール、2-[2-(2-クロロエトキシ)エトキシ]エタノール、及び、2-(2-アミノエトキシ)エタノールから4段階で末端に3,4-ジ-t-ブチルフエノキシ基と水酸基を有するアンモニウム塩を官能基性の棒の部分として合成した。続いて、この両者を組み合わせて、重合性のロタキサンを合成しようとしたが、残念ながら目的の錯形成をさせることができなかった。この理由として、棒の部分の極性が高過ぎたことが考えらる。そこで、現在、より極性の低いアルキル鎖からなるアンモニウム塩の合成を行っている。以上、まずは一例だけとはいえ目的のポリマーの合成に成功した。しかしながら、当初の計画に比べてると予想外の障害により未だ目的を達成したとは言い難い。申請した研究期間は本年度で終了するが、今後も本研究を継続し目的の達成に向けて努力する。
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