研究概要 |
海洋を含む自然環境および河川、湖沼、排水などの環境水中における低分子イオウ化合物の微生物学的代謝変換系ならびに変換されたイオウ化合物の地球環境的循環については未だ明らかではない。本研究では低分子イオウ化合物の変換における微生物の関与の実体を明らかにし、その動態解析を通じて、これまで生物学的・環境科学的にも欠落していた低分子イオウ化合物の環境中での動態を知る新たな基礎データを作り上げることを目的とした。 本研究ではまず低分子イオウ化合物の定量分析法の開発を中心に研究を進めた。低分子イオウ化合物としてすでに環境中での存在が知られているDMSO,DMS,DMSP,methane thiol,dimethyl sulfone,dimethyldisulfide, methyl sulfonic acid, methionineなどについて、試料の前処理法の検討を行った。分析対象のうち気化しやすいもの(DMS, methane thiol, dimethyldisulfideなど)は、水試料よりバブリングで追い出し、液体窒素の濃縮用トラップ(purge and trap方式、H9購入)で一端捕捉濃縮後、FPD付きガスクロマトグラフィー(現有)に導入する。水溶性化合物のうち、DMSOとdimethyl sulfoneは、NaBH_4でDMSに還元し、同様にトラップにより濃縮後GCに導入する。ただし、NaBH_4還元には還元助剤が必須であること、またGC導入には結露水を除くことが重要であることが分かった。その他はいずれも濃度が低いため濃縮し、シリル化処理後GCに導入する方法を検討した。いずれの化合物も化学的性質が異なり、また濃度の低いイオウ化合物多種類を分別定量するためには、GC導入前に濃縮用トラップで濃縮後、FPD-GCで定量するのが最も効率的であることが分かった。化合物の同定にはGC-MS(学科共有)を用いるのが最適であった。特に気化しやすい成分については試料水のサンプリングや保存法および分析までの最もロスの少ない試料の取り扱いについてあわせ検討し、最適の手順を確定できた。
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