研究概要 |
アプタマーとは,in vitro selection(試験管内選択)またはSELEX(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment)と呼ばれる方法により得られる核酸分子で,標的リガンドに特異的に結合する能力をもつものである。ランダム配列の核 酸の集団(コンビナトリアルライブラリー)から標的リガンドに結合する分子を選び,それをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で増幅し,さらに選択増幅を繰り返すことにより得られる。本研究では,アプタマーの実用化の可能性を調べることを目的として,核酸との相互作用はまったくないと考えられる中性糖や産業用酵素として知られるsubtilisinに対するRNAアプタマーの創製を試みた。5'末端18塩基,3'末端18塩基は,既知の配列とし,その間の47塩基をランダムとしたRNA集団を,対応する合成DNAの試験管内転写により得た。この集団を標的を固定化したカラムに流し,標的に結合するRNAアプタマーを選択した。得られたRNAを常法通り逆転写後PCRにより増幅し,それを鋳型として再びRNAを調製し,選択操作を繰り返した。現在のところ,中性糖に高いアフィニティーで結合するものは得られていないが,subtilisinに対するRNAアプタマーを数種得ることができており,その内のいくつかはsubtilisin活性を比較的強く阻害するものであった。これらのほとんどは,拮抗阻害剤として作用し,その阻害定数は1〜3μMであった。また,これらのアプタマーの中に共通配列が見いだされることから,この配列がsubtilisinの基質結合部位そのものかその近傍に結合するものと考えられる。このように,本研究では,細菌の菌体外酵素に対する初めてのアプタマーの創製に成功した。今後工業的利用も期待される。
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