研究概要 |
アポトーシス(プログラム細胞死)は,基本的な生理現象のみならず,各種病態患者の解明や新しい治療薬開発の観点からも,近年注目されている。しかし,in vivoの各種培養細胞を用いて,細胞レベルでのアポトーシス誘発実験が多く検討されてきているが,薬剤開発には必須のin vivoでの簡便なアポトーシス誘発モデル動物については,研究報告は少ないのが現状である。そこで本研究者は,腫瘍細胞に対してアポトーシス誘導能を有する各種の抗癌剤が,in vivo投与においては,正常細胞である毛母細胞に対してもアポトーシスを誘発することに起因すると考えられる脱毛を誘発することに着目し,抗癌剤誘発脱毛実験動物がin vivoアポトーシスモデルとしての有用であるかを検討することを目的とした。その結果,幼若8日齢ラットへの代謝拮抗剤AraC(キロサイド)やVP-16(エトポシド)の連続投与により,肉眼的に背側の完全脱毛が誘発された。またHE染色での病理学的およびIn situのTUNEL染色法検索により,毛母細胞が細胞死を起しておりこれはアポトーシスに起因する事が確認された。以上より,簡便なin vivoアポトーシスモデルの作成に成功したと考える。また,本モデル系を用いて抗アポトーシス物質を予備的に検索したところ,魚油成分ドコサヘキサエン酸(DHA)やウ-ロン茶にその作用が検出された。
|