研究概要 |
本年度は漁獲試験を行い,前年度に特定した人間が操作し制御することが可能である主要な要因について魚種選択効果を調べた。実験結果を基に魚種選択の機構を考察した。 主要な要因の中で,設置水深と釣針に着目した。設置水深層の設定可能な釣具として,離底式延縄釣具を製作した。比較対象釣具には着底式延縄釣具を使用した。離底式延縄釣具の幹縄には比重0.91のポリプロピレン縄を使用して幹縄が水に浮いて着底しないようにし,沈子下げ綱の長さを調整することによって離底距離を設定した。釣針にはタラ延縄釣針8,10,12,14,16号の5種類を一鉢毎に大きさを変えて使用した。漁獲試験では多魚種を漁獲できる漁場として,大型人工魚礁周辺を選定して行った。着底式延縄釣具の漁獲優占魚種は順にカジカ類,ホッケ,アイナメ類,マダラ,スケトウダラ等であった。特にカジカ類の中でもヨコスジカジカは卓越して多く漁獲された。離底式延縄釣具の漁獲優占魚種は順にヨコスジカジカ,マダラ等となった。幹縄の離底距離を枝糸1.2mより長い1.5mとした場合にはヨコスジカジカは1尾となったが,漁獲尾数7尾中マダラは3尾であり,またこの魚礁周辺では初めてクロソイが漁獲された。釣針の大きさ別に魚種を比較検討したが,差異は見られず,体長選択性も明確には示されなかった。 底棲魚において釣餌の摂餌競合が強く働くものの,一方でカジカ類は着底した餌だけを好んで捕食しているものと見られた。延縄釣具の魚種選択には,目的とする魚種の好む摂餌条件にするのではなく,目的外魚種は釣針に食い付けないように排除する機構を付加することが有効であると考えられた。
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