海洋細菌のなかでもVibrio属細菌は環境適応能にすぐれた菌種が多い。本研究では、海洋細菌が種々の環境下に置かれたときにポーリンチャネルの発現を変化させて適応する機構を明らかにする目的で、今回は海洋性魚類病原細菌Vibrio(Listonella)anguillarumを用いてポーリンOmp35Laの発現変化を調べた。 オキシテトラサイクリン(OTC)はポーリンを通過して菌体内に入るが、V.anguillarumではどのポーリンから入るかは不明である。今回OTC耐性株を作製してその外膜タンパクを調べたところ、Omp35Laが減少し、かわって26kDaのタンパクが増加した。この26kDaタンパク(Omp26Laと命名)の遺伝子およびタンパク構造を明らかにしたところ、大腸菌のポーリンOmpFに類似していたため、ポーリンチャネルであることが推察された。このことから、通常OTCはOmp35Laを通過するが、耐性株ではOmp35Laの発現が減少し、代わってポアサイズの小さいOmp26Laが発現するため、OTCが菌体内に侵入できないのではないか、と考えられた。Omp26Laは種々の栄養条件、カチオン条件などを変化させても発現は変化しなかったことから、OTCによって特異的に発現制御されている可能性が示唆された。 Omp35Laは著者およびSimonsによってタンパクレベルでは研究が進んでいるが、まだ遺伝子レベルでの特性は明らかになっていない。今後はV.anguillarumの主要ポーリンであるOmp35Laの遺伝子構造と発現調節を明らかにしたい。
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