研究概要 |
トランスジェニック(Tg)家畜の利用の一つにTgブタの臓器をヒトの移植用臓器として用いるための研究が進められている。しかし、異種移植臓器はブタ血管内皮上に存在するα-galactose抗原分子のため、超急性拒絶反応によって破壊されてしまう。しかし、ブタでは、有用なES細胞株が樹立されていないため、マウスにおけるジーンターゲテイング法による遺伝子のノックアウトが不可能である。本研究では、その代替法として、α1,3-galactosyltransfereaseアンチセンス遺伝子導入による宿主遺伝子の抑制を試みた。α1,3-galactosyltransfereaseのアンチセンス遺伝子(GTas)を全身性に強力に発現するpCX/GTas遺伝子をマウス受精卵前核に顕微注入して借り親に移植したところ、35匹のマウスが得られ、そのうち6匹がTgマウスと判定された。各Tマウスの遺伝子発現を解析したところ、アンチセンス遺伝子の発現が最も高い系統の肺臓において内在性α1,3-galactosyltransferease遺伝子の発現が有意に抑制されていることが示された。そこで、その系統のTgマウスの各種切片、および膜蛋白質におけるα-galactose分子を解析したところ、non-Tgマウスとの間に差を確認することができなかった。したがって、アンチセンス遺伝子導入により、α1,3-galactosyltransfereaseの活性を効果的に抑制するためには、今後、アンチセンス遺伝子の構築に関しさらに工夫が必要であると考える。
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