研究概要 |
近年ダイオキシン類化合物の重要な生体作用の一つとして、発癌や催奇形性と並んで免疫不全の惹起が注目されつつある。ダイオキシンが結合するAhレセプターと同じファミリーに属している細胞質内レセプターとしてグルココルチコイド(GC)レセプターがあるが,これはGCと結合したのち核内に移動し免疫細胞における機能分子の発現を転写レベルで抑制することが知られている。申請者はダイオキシン類化合物による免疫抑制作用において,AHレセプターがGCレセプターと同様に種々の免疫細胞の機能分子の発現を転写レベルで抑制しているという作業仮説をたて、その抑制機構を解明する目的でまず、種々の培養細胞を用いてAhレセプターの発現を調べた。AhレセプターcDNAの400残基を増幅させるオリゴヌクレオチドを設計し,種々の免疫担当細胞由来のtotal RNAを用いて,RT-PCRを行った。HUVEC、HepG2,RBLの細胞系において,Ahレセプターの発現が認められた。また、レチノイン酸刺激により、単球においてもマクロファージへの分化の過程でAhレセプターの発現が誘導されることが確認された。TCDDを培養免疫担当細胞に作用させ,細胞上のCR3およびCR4またはCD14(LPSレセプター)の発現量の変化を解析するため,それぞれの抗体を用いてフローサイトメトリー解析を行った。しかし,これらの分子についても,経時的変化は認められなかった。今後,ほかの機能分子の解析が必要であると考えられる。また、ダイオキシンの免疫抑制がAhレセプターを介さない可能性も検討しなければならない。
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