研究概要 |
正常な心筋では内向き整流性K電流、IK1がelectroporationの発生と影響を防止している。すなわち、内向きのIK1は膜の過大な過分極を防止し、外向きのIK1は過分極誘発性内向き電流(Ihi)による脱分極による不整脈の発生を防止する。膜の脂質二重層の異常時にはIhi電流が増大して心筋の機能に無視できない影響をもたらすと予想される。そこで、本年の研究目的は膜傷害性リゾリン脂質の代表であるlysophosphatidylcholine(LPC)のIhi誘発性の検封であった。主としてウサギの心室筋を用いた(LPC10μM,21例、30μM,24例)。時に株化筋細胞H9c2の筋芽細胞を使用した(LPC 10μM,6例、30μM,2例)。両標本の結果に差は認められなかった。従来のprotocolに従い、30sの階段状の過分極パルスを与えて、Ihi発生の電位依存性を調べ、これに対するLPCの効果を検討した。Ihi発生の時間経過の検討では20sまたは4sのランプ波を用いた。10μMのLPCが5〜10分の経過でIhiを発生した。ランプ波では最初のIhi発生は過分極中に発生することが多かった。LPC存在下ではIhiは-80mVの正常の静止電位でも発生した。LPCの誘発したIhiも正常時と同様にLa^<3+>で抑制されることが判明した。LPCは心筋虚血時に生成されIK1を抑制し、不整脈の原因となると報告されているが、IK1の変化に先行してIhiの発生が見られた。LPCによるelectroporationのもたらすIhi発生が不整脈誘発に関与することが示唆された。
|