研究概要 |
ヘムの最も本質的な機能を考察するために、これまで研究されてきた肝臓および造血組織以外でのヘム代謝調節機構を中心に解析を行い、それぞれの組織における生理的役割を考察した。 例えば胎盤-胎児系において、妊娠の進行・酸素の要求量の増大に対応するような特殊なヘム代謝調節が行われていることか明らかになった。従ってヘム代謝調節は外界の酸素環境に応答するような機構を備えていることが示されている(FBBSletter,439:163-169,1998)。さらに、神経細胞系においてはインターフェロンγによる調節が行われており、このことは、酸素といった化学的病因に対する応答だけでなく微生物を始めとする生物学的病因に対する環境応答にヘムが関与していることを示している(J.Neurochem.,in press,1999)。さらに、ヘム代謝系がことにその分解系を介してNOとともに体内循環動態を調節している可能性を示唆する結果も報告し(Oxygen Homeostasis and Its Dynamics,pp.328-332,1998)、その応答機構の薬理学的解析を行い、各種のNO供与体の影響を明らかにした(Biochem.Pharmacol.,in press,1999)。また、筋細胞分化時における解析を進めている(投稿準備中)。 一方では、こうしたヘムの機能に合成系の先天異常がどのような病態生化学的影響をもつかを明らかにする目的で、律速酵素である5-アミノレブリン酸合成酵素の遺伝子異常の解析を進めており、その結果の一部を報告した(Brit.J.Haematol.,103:839-841,1998)。
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