研究概要 |
感染モデルの作成:無菌マウス(IQI/jic,8w,メス)に腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7志賀様毒素SLT-I,SLT-II陽性)を経口投与することにより、感染モデルを作成した(昨年度報告)。感染マウスの病理所見では腸管において出血・炎症像が観察され,腎臓では尿細管の壊死と軽度ながらもボーマン嚢の炎症像,小脳ではプルキンエ細胞の脱落と不均一な配列,さらに大脳では神経細胞の壊死が観察された。これらの症状はヒトのEHEC感染症にみられる症状と同様のもので、感染モデルとしての有用性を示すものと考えられた。 プロバイオテクスを用いた予防および治療効果の検討:EHEC感染の予防として防としてC.butyricum588株の前投与は有用であることを昨年度報告した。今年度はEHEC感染の後にC.butyricum588株を用いて治療効果があるかどうかを検討した。EHECを経口感染(10^8cfu/mouse)後2日目にC.butyricum588株約10^9を経口投与したところ単独感染ではマウスの生残が0%となる感染8日目においても50%が生残し,12日目には37.5%の生残であった。また糞便内EHEC菌数の消長においても抑制効果が著明で感染6日目に単独群において10^<9.25>cfu/gfeces,投与群では10^<8.30>cfu/gfecesであった。 能動および受動免疫の効果:能動免疫として不活化EHEC菌体と不活化SLT-IおよびSLT-IIを経口免疫した後に,EHECを感染させた群では,対照群と同様にすべてのマウスが感染5日までに死亡した。受動免疫は家兎抗SLT-I,SLT-II血清を、EHEC感染と同日より3回投与する群と感染2日前より6回投与する群を作成した。3回免疫群では感染10日後に50%生残,6回免疫群では同じく10日後に100%の生残率であった。以上の結果,受動免疫によってEHEC感染マウスの死亡率を低下させる効果を示すことができた。
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