ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は自己免疫症状を呈する種々の炎症性疾患、{HTLV-I associated myelopathy/tropical spastic paraparesis(HAM/TSP)、HTLV-I associated uveitis}の発症への関与が示唆されている。本研究ではこれらの疾患の自己免疫症状にウイルス蛋白が関与している可能性について検討した。 1)HTLV-I Taxのトランスジェニックマウスは自己免疫症状を示すとともに、リューマチ様関節炎を好発する。このマウスから調整したT細胞は抗Fas抗体および抗CD3抗体によって誘導されるアポトーシスに対して抵抗性を示した。また、その抵抗性の程度は、関節炎を発症しているマウスにおいて増強していた。自己応答性T細胞はFas依存性アポトーシスを介して除去されるが、トランスジェニックマウスにおいてはこの機構が破綻し、自己免疫が誘導されている可能性が示唆された。我々はこれらの結果をもとに、ウイルス蛋白によるアポトーシス抵抗性の誘導が自己免疫に関与するとする新しい作業仮説を提唱した。 2)HAM/TSP由来のHTLV-Iトランスフォーム細胞においてFAP-1遺伝子の発現が亢進していた。FAP-1はFas依存性アポトーシスの抑制因子であることから、HTLV-I感染T細胞においては、TaxとFAP-1というメカニズムの異なる2つの分子がアポトーシス抵抗性に関与することが示された。
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