研究概要 |
本研究では、皮膚感作性物質であるOXAZとホルマリンを用いて、Balb/Cマウスで接触過敏症のモデルを作成し、その発症における数種のサイト力インの役割を検討した。下記の研究成果が得られた。(1)接触過敏症におけるIL-12の役割:正常のマウスでは微量なIL-2 mRNAの発現が認められたが、OXAZに対する接触過敏症のマウスではIL-2、IL-4とIFN-gのmRNAが発現したことが見られた。さらに、感作マウスに組み替えIL-12を投与した結果、非投与群より強い接触過敏症を誘発したことが分かった。また、炎症皮膚と所属リンパ節におけるサイトカインの発現に関しては、IL-12投与群ではIL-2と1FN-gのmRNA発現が有意に誘導されたが、IL-4の発現が抑制された。(2)接触過敏症におけるIL-18の役割:正常マウスの皮膚では弱いIL-18 mRNAの発現が検出したの対し、皮膚炎のマウスではIL-18の発現が誘発後の6時間に増加し、24時間にピークに達したが、その後低下の傾向を示した。また、接触過敏症(マウス耳介肥厚反応)とIL-18 mRNA発現量との間には有意な正の相関が認められた。さらに、IL-18抗体による免疫染色とIL-18特異的なRNAプローブによるmRNA in situ hybridization法を用いて、皮膚の炎症浸潤細胞が主なIL-18発現細胞であることが認められた。(3)ホルマリン接触過敏症におけるサイトカインの発現:ホルマリン過敏症におけるサイトカインの発現を検討するため、Balb/Cマウスの腹部に50%ホルマリンを3回連続塗布した。その後の異なる日に、所属リンパ節におけるサイトカインの発現をRT-PCR法で検討した。その結果、最終回塗布後の3日目より、IL-2,IL-4,IL-10,IL-12,IL-13,IL-18とIFN-gの発現が増加の傾向を示した。炎症皮膚では、検索した数種のサイトカインの中で、IL-4とIFN-gのmRNA発現のみが有意に増加したことが分かった。また、この2種類のサイトカイン発現量と接触過敏症との間に、有意な中程度の正の相関が見られた。以上の成果より、IL-2,IL-4,IL-12,IL-18とIFN-gが接触過敏症の発症に重要な役割を果たしていることが示唆されている。また、これらのサイトカイン発現の解析は、化学物質の接触感作能の新たな評価法になるだろうと思われる。
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