研究概要 |
肝細胞表面受容体の遺伝子クローニングに関しては,C型肝炎ウイルス(HCV)感染阻止能を有するモノクローナル抗体を作成する方法とHCV envelope蛋白にtagが付いた蛋白を遺伝子工学的に産生する方法でアプローチを行ったが効率の良いスクリーニングには至らず,クローンは得られなかった。 本研究でHCVが結合する細胞表面受容体のアッセイのために,我々は清水洋子博士らが開発したT細胞株HPB-Ma細胞を用いて,血中での感染可能なHCVの半定量系の測定系を確立し,HPB-Ma細胞に感染するHCVは血中HCVの中の一部であることを確認した。このHPB-Ma細胞に感染するHCVをインターフェロン治療前の患者血清を用いて測定した結果,インターフェロン療法の最終的な治療効果が血中totaI RNAよりもHPB-Ma細胞に感染するHCVを測定することがはるかに有用であることを確認し,C型肝炎患者52例の解析として原著として公表した(JMedVirol 1998)。 このHPB-Ma細胞に感染するHCV測定が有効である理由を検討した結果,HCVでは肝細胞由来のHuH7細胞を用いて測定した結果とT細胞由来のHPB-Ma細胞を用いて測定した結果が明らかに異なる例が存在していることを確認した。従ってHPB-Ma細胞に感染するHCVを測定することはリンパ球嗜好性HCVを測定していたためと考えられた。更に症例数を100例以上に増やしたprospective studyでも同様な結果であることを確認して現在投稿準備中である。 本研究ではクローニングには至らなかったが,HCV感染でのcell tropismが生体内で重要な意味を持つことが明らかにでき,今後の受容体研究への一助となるものと思われる。
|