研究概要 |
【目的】我々はα-1-アンチキモトリプシン(ACT)の生理的役割を明らかにするため,既に我々が発見したACT変異体(ACT Isehara-1)と疾患との関連を検討している.今回ACT Isehara-1と閉塞性脳血管障害について検討した. 【症例】脳梗塞患者(CI群,平均58±12歳)87名と正常対照(N群,平均50±9歳)261名を対象とした.先天性心疾患,不整脈や脳腫瘍などの基礎疾患を有するものを除外した. 【方法】ACT Isehara-1のスクリーニングにPCR-SSCP法を,ACT Isehara-1の確認にはPCR-RELPおよびDirect Sequencing法を用いた.高血圧,糖尿病や高脂血症などの脳梗塞の危険因子との関連も検討した. 【結果】CI群におけるACT Isehara-1の頻度は,87人中11人と,N群に比して有意に高かった(odds ratio 2.37,p=0.034).ACT Isehara-1を有するCI患者にラクナ梗塞が多かった.危険因子では,高血圧群でACT Isehara-1の頻度が高かった。 【総括】ACT Isehara-1陽性例はCI群に有意に多かった.特にラクナ梗塞群にACT Isehara-1陽性例が多かった.高血圧と関連して脳血管障害を引き起こしている可能性が示唆された.今後更なる症例の蓄積を行い,ACT Isehara-1と脳血管障害との関連をより明確にしたいと考える.また血管内皮細胞へ正常および異常ACTを添加して,内皮細胞の形態学的変化や細胞死のメカニズムについて探ることも検討している.
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