申請者らは、ピリミジン分解に関与する酵素であるDHP(dihydropyrimidinase)の、四種類のホモローグのcDNAをヒト胎児脳より単離し、DRP(DHP related protein)1-4と命名した。このDRPファミリーは、他の研究者らにより神経軸索退縮現象の細胞内情報伝達系への関与が報告されたが、申請者らはmRNAのヒト成人各組織における分布解析より、DRPファミリーが神経系以外にもそれぞれ特有のパターンで発現し、数種のヒト癌組織においてはいずれも著明な発現低下を示すことを見いだした。これらはDRPファミリー遺伝子が発癌に抑制的に作用していることを示唆し、癌化に関連した新しい分子メカニズムを解明できる可能性があると考え、本研究を開始した。まず、各種ヒト癌組織におけるDRP発現量の解析目的で、各種癌手術標本より得たtotal RNAを用いノーザン解析を行い、著明なDRP1-4mRNAの低下を認めた。また、大腸菌にて大量発現させたリコンビナントDRP蛋白に対する抗体を作製を開始し、免疫染色法による蛋白レベルの解析を開始した。また、COS-7細胞におけるDRP発現系を確立した。それで得たリコンビナントDRPを用い、アミド結合を持った他の生体内物質またはジヒドロピリミジン誘導体を含めた合成基質の酵素活性もしくは結合能の有無の検討を開始した。一方、各種癌組織におけるDRP遺伝子のLOH(loss of heterozygosity)を検討する目的で、ヒトDRP2遺伝子のクローニングを開始し、ほぼ完了した。各種癌手術標本より得たgenomic DNAを用い、DRP2遺伝子のLOHの検索に入った。また、動物培養細胞においてDRPジーン・ターゲッティングの準備を行っている。
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