研究概要 |
我々は、ヒト末梢血幹細胞分画より樹状細胞(DC)を誘導し、それを用いて造血器腫瘍に対する自己の細胞傷害性T細胞を誘導することに成功した。G-CSFで末梢血に動員したCD34^+細胞をGE-CSFとTNFα存在下に1週間以上培養するとDCを含む細胞のクラスターが出現する。その構成細胞を貧食能の有無及び免疫染色でその表面形質を解析したところ、約50%の細胞はDCの形態を有する非貧食細胞で残りはラテックス粒子貧食細胞であった。細胞表面マーカーでは非貧食細胞群は典型的な成熟DCの表面形質(CD1a^+, 11c^-,54^+,83^+,MHC II^<hi+>, fascin^+)を有していたが、貧食細胞はCD1a^-,11c^+,54^+,83^-,MHC II^<〜hi+> fascin^+で未熟なDCの形質を呈した。このクラスターは抗原特異的なCTLの誘導において、外来蛋白であるkeyhole limpet hemocyanin(KLH)をCD4+,CD8+両方のT細胞に抗原提示することができた。さらに、急性白血病患者3例のうち2例において放射線照射した自己白血病細胞をこのようなDCクライスターにパルスしたものを用いて自己白血病細胞に対する細胞傷害性T細胞を誘導することに成功した。頻回にピペッティングすることによりクラスター形成を機械的に阻止するとほとんどCTLが誘導されてこなかった。このことからクラスター形成は白血病細胞に対するCTLの誘導に必須であることが示唆された。これらのことは末梢血幹細胞移植と自己末梢血CD34^+細胞由来のDCを用いた免疫療法を組み合わせて行おうとする場合には重要な意味を持つと考えられる。
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