研究概要 |
本研究はトロンボポエチン(TPO)の血管内皮細胞における一酸化窒素(NO)産生能に及ぼす作用を課題としたが、これに関する報告は現時点でもない。 本研究では、初めに血管内皮細胞の一酸化窒素合成酵素(eNOS)に及ぼすTPOの作用を検討した。ヒト大動脈および冠動脈由来の血管内皮培養細胞に、TPOを添加しRNAを抽出後,Northern blot analysisを施行した。TPO添加にて大動脈および冠動脈血管内皮細胞のeNOSのmRNAレベルに有意な変化は認められなかった。さらに、我々はNorthern blot analysisとWestern blottingにて血管平滑筋細胞におけるTPO受容体の発現を確認しているので、血管平滑筋細胞におけるiNOSに及ぼすTPOの作用をNorthern blot analysisにて調べた。その結果、TPO添加にて大動脈および冠動脈血管内皮細胞のiNOSのmRNAレベルに有意な変化は認められなかった。 次に、ヒト大動脈および冠動脈血管内皮細胞培養系において、各濃度のTPOを添加し、培養液中のNOをGriess試薬系で測定した。同時に、経時的変化も調べた。TPO添加にて血管内皮細胞由来NO濃度に有意な変化はなかった。 現時点で、論文化できるような成果は得られていないが、今後も研究を続けていきたい。 我々が同時に進めている血管壁代謝に関する研究で、GM-CSFの抗動脈硬化作用に関する研究は現在Circulationからの返事に対して追加実験を行い再投稿中である。また、脂質代謝においてIL-1β、IL-6のアポリポ蛋白B代謝に及ぼす作用をまとめた研究は、J.Lipid.Res.39:103-113,1998)に掲載された。
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