研究概要 |
早期膵癌にて,今までの組織病理学的検索では長期生存例と早期再発例とを予測することが困難であったが,これを分子生物学的アプローチにより癌の進行度を検討し,より正確に予後を予測できるか否かを検討するため,1980年〜1991年に手術を施行し予後を追跡できた症例のうち,長期生存者が存在する,腫瘍径3.0cm以下で,リンパ節転移蔭性例(ただし,#13,#17番のみに転移の認められる症例は除く)膵頭部浸潤性膵管癌22例を対象とし研究を施行した.膵癌患者の手術時に得られた癌部、非癌部組織,リンパ節,神経叢のホルマリン包埋標本より未染スライドを作製し、HE染色下に選択的にDNAを抽出し,これらの材料より,制限酵素Bst-N1による切断部位を導入したミスマッチブライマーによるPCRをかけた後,Bst-N1による切断をし,Non-RI SSCP法を行い,mutationの形を間接的に観察した(本法によりわずかな量のK-ras codon12点突然変異でも検出可能である).対象となった,22例中12例がPCRで増幅可能であり,腫瘍部の組織にK-ras codon12の点突然変異が認められたのは10例であった(83%).その10例において,リンパ節及び神経叢の検討を加えた.腫瘍と同じbandを示す,リンパ節と神経叢を転移あるいは浸潤陽性として判定した.この結果に基づき遺伝子診断において,a:リンパ節転移陰性例または,膵頭部までのリンパ節(#13と#17番)転移陽性群と,b:それを越えたリンパ節・神経叢浸潤陽性群においては,生存期間に0.05以下の有意差を認めた.
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