研究概要 |
1. 各投与経路別のadenoviral vectorの感染,遺伝子発現について経静脈的,経門脈的,無血的肝潅流法にて遺伝子(beta-galactosidase)の発現を比較すると,無血的肝潅流法が,約5倍の発現が経静脈的,経門脈的に比較して得られた. 2. 無血的肝潅流法の安全性 無血的肝潅流法を施行したビーグル犬の1週間生存率は4/5,80%で,肝逸脱酵素は術後3日目でピークをむかえた(ALT 323±65,AST 255±98)が,1週間後には正常化した. 3. 無血的肝潅流法の投与条件の検討 潅流液の温度(4度vs25度),潅流速度(30ml/min vs 100ml/min)では,25度,30ml/minで遺伝子発現の均一性,量ともに増加した. 4. 薬剤などの添加物の影響 血漿成分,蛋白分解酵素阻害剤,プロスタグランディングランジン製剤と潅流液との混和ではいずれも1.5倍強の発現量の増加を認めたが,N-number少なく,有意差を認めるまでには至っていない. 以上より,無血的肝潅流法は肝に対するadenoviral vectorを使用した遺伝子投与法として,その有効性,安全性が大動物においても証明された.さらに,血漿成分,蛋白分解酵素阻害剤,プロスタグランディングランジン製剤の同時潅流により導入率の向上がえられ,臨床応用に希望が持てる結果となった.
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