研究概要 |
(1) 胸腺腫腫瘍内リンパ球分化度のフローサイトメトリーによる解析を行った。胸腺腫新鮮摘出標本(N=10)および正常胸腺(N=3)からリンパ球成分を抽出し、CD3,CD4,CD8,CD10,CD20,CD34,CD38抗原発現度について3-color analysisを施行した。胸腺腫・胸腺ともにCD4+CD8+double positive cellが優勢であった。この分画はCD38+であった。胸腺腫内にはCD20またはCD34陽性細胞は認められなかった。胸腺腫ではCD10+CD4+CD3weak分画が平均22%認められた。これは正常胸腺では認められず、胸腺腫内リンパ球は正常胸腺よりも幼弱なT系リンパ球が含まれていることが示された。 (2) 胸腺上皮腫瘍(胸腺腫および胸腺癌)の悪性度と腫瘍内リンパ球分化度の関連について検討した。被包型胸腺腫(N=12),浸潤型胸腺腫(N=8)、胸腺癌(N=3)について、切除標本からリンパ球成分を抽出し、(1)と同様にフローサイトメトリーを施行した。CD4+CD8+double positive cellの割合は被包型74.7±16.7%>浸潤型55.6±33.6%>胸腺癌6.7±9.8%と各群で有意差が認められた。また、CD10+cellの割合は被包型19.6±10%=浸潤型20.5±25.0%>胸腺癌6.0±1.4%であった。胸腺癌ではCD4/CD8 single positiveであり、かつCD20+分画が存在し、末梢血のそれと類似していた。胸腺上皮腫瘍の悪性度の判定のために、腫瘍内リンパ球の分画の測定は有用であった。
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